Hello & Welcome ! 皆さんこんにちは。
アメリカの片田舎から、【心を育てるガーデナー】のさやリンです。
オレゴン発、暮らしに役立つ植物やハーブ活用法、心を育む絵本の事を発信しています。
私がガーデナーとして管理しているお庭に、
誰が植えたのかもわからない、種から育った一本の古いリンゴの木があります。
そしてこの秋——
その木に、今まで見たこともないほど真っ赤で美しいリンゴが実っていました。
つやつやと輝くその姿に、「きっと美味しいに違いない」と期待を膨らませ、
さっそくひと口。
……食べてみたら、びっくりするほど 「不味い!」(笑)
このシャキシャキ感のない“ぼけリンゴ”は、まるかじりでは楽しめないし、
かといって、せっかく自然の力で実ったものを捨ててしまうのももったいない。
なんとか美味しくいただく方法はないものか——。
そんな思いから、
リンゴの産地・長野育ちの私が、種から育った美味しくないリンゴを美味しくいただく方法を探してみました。

種から育てたリンゴは、なぜ美味しくない?
種から育ったリンゴが、見た目は立派なのに「なんだか味が薄い」「ボソボソしている」と感じる理由には、ちゃんと訳があります。
理由①:遺伝の個性(種から育つと、親とはまったく別の味に)
スーパーで売っているリンゴは、ほとんどが「接ぎ木(つぎき)」(Grafting) という方法で増やされたもの。
これは、“おいしいリンゴの枝”を別の木にくっつけて、同じ味のリンゴを再現する育て方です。
こうすることで、親と同じ味・香り・実の質を保つことができるんです。

でも、種から育てると、親とはまったく違う性質のリンゴが生まれます。
たとえるなら、
「甘いお母さんリンゴ」と「すっぱいお父さんリンゴ」の間に生まれた子どもが、
どんな味になるかは育ってみないとわからない——そんな感じ。
リンゴの種にはいろんな遺伝の組み合わせがあって、
生まれてくる木は、親とはまったく違う性質を持つことが多いのです。
だから、スーパーで買った美味しいリンゴを種から発芽させて、何年もかけて成長させた木から、全く別の美味しくない実がなってしまうのです。
理由②:交雑(リンゴの花粉が交ざり合う)
しかもリンゴは、毎年いろんな品種の花粉が風や虫で運ばれて**交ざり合う(交雑する)**植物。
そのため、育った木が「野生の種に戻る」ことがあります。

その為、見た目は立派でも
- 酸っぱくなったり
- 渋みが出たり
- 小さな実になったり
- “野生リンゴ”のような味になったり
種から育てると、味が全く違う実ができるのです。
理由③:完熟のタイミング
同じリンゴでも、育つ環境によって味は大きく変わります。
実になったまま長く置きすぎると、水分が抜けて“ぼける”こともあるし、
逆に、早く収穫しすぎても甘みが乗りません。
種から育てた木は特に、熟す時期が読みづらく、完熟のベストタイミングを見極めるのが難しいのです。

不味いリンゴを美味しくする食べ方
では、シャキシャキ感のない、*ぼけリンゴを美味しくする方法を紹介しますね。
種から育ったリンゴだけではなく、もしスーパーで買ってきたリンゴがボソボソした食感だったり、食べごろが過ぎて、柔らかめになってしまった場合のとっておき処理法。それは……
『煮る !』
「どんなリンゴでも、火を通せば美味しくなる。」
これはアメリカの家庭でよく聞く言葉です。
*リンゴが”ボケる”は方言?
”ぼける”と言う表現は、長野県を中心に東日本で使われる方言で、リンゴの水分が抜けて歯ごたえが悪くなり、食感が粉っぽくボソボソする状態を指し、食べごろを過ぎた状態のリンゴを表す言葉です。
長野育ちの私は、リンゴが”ぼける”は当たり前のように使っていた言葉ですが、長野県だけでなく、リンゴの産地である東日本で使われることが多く、西日本ではほとんど使われないそうです。
アップルソースより美味、アップルバターとは?
リンゴを煮る調理法で、皆さんが知っているのはきっと、アップルソースやりんごジャムだと思います。
でも、種から育ったリンゴのように、ぼけて、歯ごたえも悪い場合、もっと美味しく仕上げられるのが、
アップルバターです。

アップルバターとは?
これは、アップルソースやジャムを“さらに煮詰めた”濃縮版のようなもの。
リンゴをじっくり時間をかけて加熱し、水分をしっかり飛ばして作ります。
火を入れるほど果実の糖がキャラメル化し、色は濃い琥珀色から茶色に、味はコクのある深い甘さに変化。
乳製品のバターは使いませんが、なめらかで濃厚な舌ざわりが「バターのよう」なことから、この名がついています。

ヘルシーで簡単『アップルバター』のレシピはこちらの記事を参照 ⇓

まとめ
見た目も、香りも、味も、期待とは違った種から育った“ぼけリンゴ”。
けれど、手をかけ、火を入れ、時間をかけて煮詰めることで、
その不完全さはやさしい甘さに変わっていきます。
自然の個性を楽しんで、
どんな味になるか分からないのも、種から育てる楽しさのひとつかも?
でも、もし美味しくなくても、煮てしまえば、いいんです。
”不味い”リンゴを無駄にせず、
「どうすれば美味しくできるだろう」と考えるその気持ち——
それこそが、心を育てるガーデナーマインドだと思うのです。
皆さんも、“不味い”リンゴに出会ったときは、ぜひ、加熱調理で美味しく仕上げてくださいね。
それでは、オレゴンから愛を込めて、
Until the next time !
さやリンでした。

