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~大地と空の声を聞こう。絵本が開く、新しい世界~
皆さんこんにちは。
オレゴンの片田舎から、【心を育てるガーデナー】のさやリンです。
子どもから、大人まで、自然と絵本の素晴らしさを届けるお手伝いをしています。
紅葉の季節がやってきました 。
赤、黄、橙色の葉っぱは、まるで自然がキャンバスに描いた絵画のように美しい!その素晴らしい景色を満喫できることに感謝しつつ、紅葉を見るといつも思い出す、子供にも大人にも感動的な秋の絵本を紹介します。
”もののあわれ”と秋の絵本
日本の文学において”もののあわれ”という概念があります。確か高校生の時に、古典や歴史の時間で習いましたよね。言葉で説明するのは、少し難しいかもしれませんが、私たち日本人の感覚の中に、”もののあわれ” 的な感情は、誰にでもあるのではないでしょうか?
例えば、桜の花びらが散る様子や、夕焼けの消えゆく光など、それは、一瞬の美しさの中にある移ろいゆく生命の儚さを愛おしむ感覚です。英語だと、The beauty of impermanence、”永遠でない事の美しさ”とも訳せますね。今の季節の秋の紅葉や落ち葉を見ながら、自然の移ろいゆく儚さや、人の世の無常を感じ取る感性が生まれます。
この”もののあわれ”を感じさせる一冊の絵本が、『葉っぱのフレディ』です。
『葉っぱのフレディ』日本語&英語の絵本紹介
『葉っぱのフレディ』は、アメリカの作家レオ・バスカーリア博士 (Leo Buscaglia, Ph.D.)によって書かれた最初で最後の絵本です。
英語版は、
The Fall of Freddie the Leaf ~A Story of Life for All Ages
Publisher : SLACK, Inc
1982年に初版になった、ロングセラーの絵本です。
私がこの英語の絵本に出会ったのが、地元の図書館の寄付の本の棚でした。少し年季の入った絵本でしたが、素敵な絵本だと思い、一冊50セントの寄付をして、家に持って帰りました。あの頃は、子育ての為にと、子供と一緒に読んでいましたが、改めてこの紅葉の時期に、今度は自分の為に読むと、さらにこの絵本の意図である生命の儚さである”もののあわれ”を感じます。
あらすじ
物語は、一枚の葉っぱである主人公のフレディを中心に展開します。そして、フレディは、親友であり物知りのダニエルから、いつもフレディは自分が葉っぱであることの大切な意味を教えてもらいます。そして、ひとつとして同じ葉っぱでない他の仲間たちと、一年を通して成長し、季節の変化を感じ取りながら生きていきます。春の芽吹き、夏の輝き、そして秋の紅葉。やがて冬が訪れ、葉たちは枝から離れていきますが、その過程を通してフレディは自然の一部である「死」ということの意味を学びます。
この物語は、子どもたちに自然のサイクルや生命の儚さを教えるだけでなく、大人たちにも深い感慨を呼び起こします。フレディの旅は、私たち一人一人の人生と重なり合い、もののあわれを感じさせてくれるでしょう。
日本語版は、
作: レオ・バスカーリア
絵: 島田 光雄
訳: みらい なな
出版社: 童話屋
発行日: 1988年10月
文章が中心の絵本で、英語版は、絵はなく、季節の移ろいとともに変化していく木の様子が写真のみで表現されていますが、日本語版は、美しい写真と水彩の挿絵で描かれています。
『葉っぱのフレディ』から学べる事
① 自然への共感
紅葉が散る瞬間に、美しさと哀しさが同時に感じられる、もののあわれの感情のように、葉っぱの物語を通じて、私たちも自然界の一部であり、その循環の中に人間も含まれていることを比喩的に教えてくれます。
② 受け入れの精神
フレディも、自分が落ち葉になる運命を受け入れ、最後は安らぎの中で木を離れます。間接的に「死」についての事も意図する絵本なのですが、「死」を恐れや悲しみととるよりも、そこで終わりなのではなく、むしろ新たに季節が始まるという蘇生の希望や勇気を与えてくれる絵本です。
小さなお子さんには、文字数も多いので難しそうな絵本かもしれませんが、たとえ絵本の内容や、”もののあわれ”という絵本が意図する概念はまだ理解出来なくても、
- 紅葉や落ち葉の絵から、美的感覚が学べたり、
- 植物の季節のサイクルについて覚えたり、
- または、「死」という内容を子供にどう説明してよいかわからない時に、
- この絵本は、優しく語りかけてくれると思います。
親がまず読んで、そして外に出かけて子供と一緒に紅葉の木をみながら、フレディや仲間の葉っぱたちを一緒に探してみるのはどうでしょうか?
まとめ
『葉っぱのフレディ』は、子どもたちに自然のサイクルと生命の尊さを伝える絵本ですが、大人にとっても深い意味を持つ絵本です。 ”もののあわれ”という日本の美意識を重ね合わせることで、秋の紅葉の美しさとともに、生命の儚さと美しさを感じることができるのではないでしょうか?
一瞬一瞬の自然の美しさに感謝し、その儚さも受け入れる心は、昔も今も、そして未来も、大切な考え方だと思います。
皆さんも、秋の風景を楽しみながら、『葉っぱのフレディ』の物語に思いを馳せてみませんか?
それでは、オレゴンから愛を込めて、
Until the next time !
さやリンでした。